川﨑先生コラム 第18弾「スポーツ選手を悩ませるドーピング検査」
2022/02/18
こんにちは!
日本医学柔整鍼灸専門学校 広報担当です。
川﨑先生コラムの第18弾をお届けいたします!
スポーツ選手を悩ませるドーピング検査
冬季オリンピックが始まり世界中の選手が競技の限界までチャレンジする姿にとても敬服します。
選手はオリンピックに出場するために様々な困難を乗り越え、オリンピックという最高の舞台に立ち輝きを見せてくれています。
さて、スポーツの価値観とは何でしょうか。メダルを取ることだけでしょうか。
もっと大切なことは、挑戦する気持ちや支え合いお互いを尊敬する気持ちの素晴らしさも価値観にあり、常にフェアーであることが大切なことだと思います。
自分以外の選手が最高の技術を見せた時や、失敗した時もお互いを称え合い喜び励まし合う姿はスポーツの極みであり、その背景にはフェアーであることが前提で、スポーツを通じた価値観は社会的価値観も含まれます。
その価値観を揺るがし問題となっているのがドーピングです。
世界主要大会では参加選手が信頼や期待を裏切ることなく公正に競技するために検査の導入が行われています。
日本の主要な大会でも選手の公正さを保つために厳正なドーピング検査が導入されています。
それに伴い指導者は、選手に対してスポーツ精神を育成し、ドーピングを予防する教育が必要となっています。
♦ ドーピングとは
ドーピングとは「スポーツにおいて禁止されている禁止物質や禁止方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」のことです。
選手に対して禁止物質・禁止方法を使用または使用を企てたり、ドーピング規則違反を手伝い関与すること、規則違反に関与していた人とスポーツの場で関係を持つことなども含めてドーピングと呼びます。
スポーツ界において初めて禁止物質を規定したのは国際陸上競技連盟です。
ドーピングが禁止される理由は公正であることだけではなく、ドーピングによる死亡事故が発生していることも理由にあります。
1886年の自転車レースでドーピングによる最初の死亡例が報告されています。
また、1960年のローマ・オリンピック競技大会においてもドーピングによるアスリートの死亡事故が発生しています。
ドーピングは健康上の被害を引き起こす可能性がある危険な行為でもあります。
選手の健康を守る意味も含めて厳しく検査が行われています。
オリンピックでは1968年グルノーブル冬季オリンピック競技大会、メキシコ夏季オリンピック競技大会からドーピング検査を開始しましたが、ドーピングのルールや禁止物質の統一基準はありませんでした。
1999年に世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が設立されてから統一されたルールと基準が構築されました。
アンチ・ドーピングのルールは、世界のどこでも、等しく、同じルールが適用されています。
♦ ドーピング検査とは
アスリートは自分がクリーンであることを証明するために、いつでもどこでも検査に対応する責務があります。
ドーピング検査計画に沿って、アスリートから尿と血液(両方もしくはどちらか一方)の検体を採取します。
最後に検査書類に検査の日からさかのぼって7日間に使用した薬やサプリメントを申告します。
尿検体や血液検体は世界アンチ・ドーピング機構が認定した分析機関に送られます。
禁止物質または禁止物質や禁止方法の使用を示すような物質が検出された場合は違反疑いとなります。
分析機関として認められるには厳しい条件があり、日本国内で認定分析機関として認められているのは1カ所のみです。
1.尿検査
ドーピング検査員(同性)の立ち会いのもと、採尿を行います。
3つ以上の採尿カップから選手自身が一つ選んで未開封であるか確認をした上で行います。
ドーピング検査員の指示のもと、サンプルキットのAボトル及びBボトルに尿検体を注ぎ、しっかりとキャップを閉めて提出します。
2.血液検査
採血を行う前に選手の健康状態について問診を行います。
検査に使用する器具を複数の中から選び、アスリート自身で破損や汚れがないことを確認し、採血を行い提出します。
♦ ドーピングに関する薬
ドーピング禁止物質は、病院で処方される医療用医薬品や薬局、ドラッグストア等で購入できる市販薬に含まれています。
また、サプリメントにも含まれていることがあり注意が必要です。
しかし、スポーツにおいて、すべての薬の使用が禁止されているわけではありません。
禁止物質や禁止方法に該当しないものであれば、用量用法を守り使用することができます。
禁止物質は3つに分類されます。
①常に禁止されている物質(使用してはいけないもの)
②競技大会において禁止されている物質(大会中だけ禁止)
③特定の競技において禁止されている物質(該当競技以外の選手は使用可)
どうしても薬を服用しなければならない場合は、スポーツファーマシストに相談して確認が必要です。
スポーツファーマシストは最新のアンチ・ドーピング規則に関する情報・知識を持ち、薬の正しい使い方の指導などを行う専門家です。
♦ ドーピング違反になったら
ドーピング検査の結果、違反が疑われた場合は書面で通知されます。
最初の検査で提出した採尿や採血をしたサンプルは2つあり、初めに分析された検体が陽性でも、もう一つの検体の分析を依頼することができます。
両方とも陽性であった場合、もしくは再分析を拒否した場合は、聴聞会が開かれ選手と検査管理機関側の双方から主張・意見を聞き、違反の事実認定と成績失効などの制裁決定を行います。
もちろん不服申し立てができる権利が選手にはあります。
違反になると選手の大会成績が自動的に取り消され、スポーツ活動が一定期間できなくなります。
選手だけでなく指導者やコーチ、チームドクターなどサポートスタッフもその対象となり活動が一定期間できなくなります。
また、チームで複数人違反者が出た場合はチームに対して制裁が科される場合があります。
ドーピング違反はスポーツの社会的な信用を失墜させることにもつながってしまいます。
♦ どうしても薬を服用しなければいけないときは
病気やけがをしてしまった時は、どうしても治療必要な薬を服用しなければいけないことがあります。
選手はドーピング違反を心配して薬を服用することに悩みます。
しかし、どうしても薬を服用しなければいけないときは治療使用特例申請という方法があります。
特例が認められれば例外的に禁止薬物も使用ができます。
申請は原則として大会の30日前に申請する必要があります。
ただし、承認されていなければ、医療上の理由でも禁止物質・禁止方法を使用できません。
万一、使用してしまうと「アンチ・ドーピング規則違反」と判断されてしまいます。
特例承認条件を理解しておく必要があります。
[治療使用特例承認条件]
①治療をする上で使用しないと健康に重大な影響を及ぼすことが予想される場合。
②他に代えられる合理的な治療方法がない場合。
③使用しても健康を取り戻す以上に競技力を向上させる効果を生まないこと。
④ドーピングの副作用に対する治療ではないこと。
最後に
新型コロナ感染予防によるワクチン接種はドーピング違反にならないのか疑問ですね。
ワクチン接種にともなうドーピング検査への影響を心配する選手もいます。
しかし、ワクチンの中にはドーピング違反になる物質は含まれておらず、自身や周囲の人たちのためにワクチンを接種することを推奨しています。
また、これまでに承認されたワクチンが持続的なパフォーマンスの低下を引き起こすという証拠はないとパフォーマンスへの影響も否定されています。
最近、胃腸の調子が悪く手足が冷えるので鶏肉とクコの実、ナツメを使った薬膳スープを作って食べています。
まあ、運動不足も関係しているので運動するのがいいのですが・・・。
鶏肉には素敵な効能があり、善玉コレステロール(LDH)の生成を助ける働きや、エネルギー源となる飽和脂肪酸とコレステロールを減少させる不飽和脂肪酸がバランスよく含まれています。
また、疲労回復を促す効果もあります。
ナツメは貧血予防や血圧を下げる効果、冷え性の改善やむくみの改善、精神的疲労の回復効果もあります。
なんと花粉症予防に効果があると研究されています。
クコの実はビタミンが豊富で、体の酸化を防ぐ効果があり美容食材として有名です。
胃腸の改善、脂質や糖質をエネルギーに変えて脂肪燃焼を助けます。
免疫力を高めて感染予防にも効果があります。
私にとって鶏肉の薬膳スープは1日の疲れを取ってくれて心身ともに安らぎを与えてくれるお料理です。
柔道整復師・鍼灸師
本校柔道整復学科 専任教員 川﨑有子
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- 【川﨑先生コラム】風邪をひきにくい体へ!運動と免疫力
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こんにちは!! 日本医学柔整鍼灸専門学校 広報担当です。 川﨑先生コラムの第61弾をお届けいたします! 風邪をひきにくい体へ!運動と免疫力 インフルエンザが流行している時期ですが、年末年始は健やかに楽しく過ごしたいですね。 一般的なかぜやインフルエンザにかかりやすい人とそうでない人では、免疫力の差に違いがあります。 免疫力は加齢や過剰なストレス、生活習慣などにより低下するとされています。 免疫力は生まれながらに持つ生体防御機能で個人差がありますが、健康的な食生活や適度な運動、規則正しい生活を心がけていれば向上することができます。 しかし、健康意識が高く予防を心がけていても、かぜやインフルエンザにかかってしまいます。 そして意外にも、一般的な人より丈夫な体をしていると思われている、アスリートの方がかぜをひきやすい傾向があります。 かぜをひきやすい人、そうでない人の個人差とはどんなものがあるのでしょうか。 常に元気であり、好きなことを続けられる体づくりをするためのヒントをお伝えしたいと思います。 1.かぜ症候群とインフルエンザの感染経路 かぜやインフルエンザはウイルスによる感染がほとんどで、感染経路は接触感染、飛沫感染、空気感染です。 感染とは、口や鼻、目の粘膜から体内に侵入したウイルスが上気道(鼻腔から咽頭まで)の粘膜に付着し増殖することにより、くしゃみや鼻水、咽頭痛などの上気道症状や、発熱、頭痛など様々な症状が現れます。 2.感染を防ぐ免疫抗体 「抗体」とは、体内に入ってきた病原体などの異物(ウイルスや細菌などの抗原)を排除するために働く、「免疫グロブリン」というタンパク質のことです。 異物が入ってくると抗体が作られ、異物を攻撃し発病を防いでくれます。 免疫グロブリンはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、それぞれに働きがあります。 特に、免疫機能に関係するのは、「IgG」と「IgA」です。 「IgG」は血液中に最も多く含まれている免疫グロブリンで、免疫機能の主役となるものです。 「IgA」は2番目に多い免疫グロブリンで、唾液や鼻汁、涙、消化管(腸管)などに粘膜表面に含まれている粘膜免疫です。 IgGとIgAは、病原菌やウイルスに対する感染防御の高い抗体として体を守ってくれています。 3.激しい運動は免疫力を低下させる 運動は、私たちの健康維持に欠かせない要素の一つです。 心肺機能の向上や筋肉の強化だけでなく、免疫力の向上にも大きく貢献することが知られています。 適度な運動は免疫力を高め、感染症の予防に有効とされています。 しかし、激しい運動やトレーニングは骨格筋への血流は増えますが、粘膜、内臓への血流が抑制され、免疫バリア機能が低下します。 その他、交感神経が優位になり、体内をパトロールしながら細菌やウイルスを見つけると強い殺傷能力で攻撃する「NK細胞」(ナチュラルキラー細胞)や異物の情報を伝える役割をしている「ヘルパーT細胞」、そして、ウイルスに感染した細胞や病原体になった細胞を、直接やっつける役割をしている「キラーT細胞」の機能が低下し、免疫細胞の活動が抑制され、免疫力が低下します。 また、唾液に存在するIgAの分泌も減少し、粘膜免疫が低下しかぜをひきやすくなります。 4.免疫力低下の原因 ①上気道や口腔の乾燥 気管や気管支の粘膜は多列線毛上皮で被われています。 上気道から気管支に入ったウイルスは、粘膜上皮細胞から分泌される粘液にキャッチされ、線毛運動により排泄され防御機構が働きます。 ただ、線毛は寒さと乾燥に弱いという弱点があり、冬の季節はウイルスが侵入しても排泄する力が弱くなってしまいます。 もう一つは、口腔内の乾燥による粘膜免疫の低下です。 唾液分泌量が多い方が、ウイルスや細菌に感染しにくいといわれ、唾液には粘膜免疫の役割があるため感染防御に働きます。 唾液の分泌はリラックスした状態の副交感神経が優位の時に増加し、激しい運動時には交感神経が優位になるため、唾液の分泌量は低下し、IgA抗体の産生も低下します。 試合シーズン中のアスリートやストレスを抱えている人は、唾液の分泌量が減少するので免疫力が低下しかぜをひきやすくなるということです。 適度な強度で心地よい負荷の運動をしている人は、唾液に存在するIgA抗体の分泌が上昇するため、ウイルスや細菌をブロックする能力が高まります。 ◇ 唾液分泌には、耳下腺、顎下腺、舌下線という三大唾液腺があります。 特に、免疫に関しては、口腔や上気道の粘膜を保護するための粘性がある唾液を分泌する、顎下腺や舌下腺が重要となります。 唾液腺のマッサージをすることで唾液分泌が促進できます。 是非、やってみてください。 🌸耳下腺マッサージ 頬に人差し指から小指までの4本の指をそろえて当て、上の奥歯あたりを後ろから前へ円を描くように擦ります。 🌸顎下腺マッサージ 顎の内側の柔らかい部分に指をあて、耳の下から顎の下に向かって指先で押していきます。 🌸舌下腺マッサージ 両手の親指をそろえて、顎の真下から舌を突き上げるようにゆっくりと押し上げる。 各マッサージを10回3セット行いましょう。 マッサージを行うタイミングは、食事前やリラクゼーションの際など、できるタイミングでOKです。 テレビを見ながらでも簡単に行えるので、毎日行うようにしましょう。 ②ストレス 自律神経とともに体の機能を調節しているのがホルモンです。 運動はホルモンの分泌にも関係しており、ホルモンを介して免疫にも働きかけます。 高強度の運動は身体を変化させるため、心身ともにストレスになります。 そのストレスに対抗するために、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)というホルモンを分泌して、体は頑張ろうとします。 アスリートの場合、ストレスを感じる合宿や試合シーズン中など、高強度のトレーニングや精神的負担を強いられる時期は、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)やカテコールアミン(副腎から合成・分泌される神経伝達物質)が過剰に分泌され、必要なタイミングで分泌ができなくなます。 結果的にストレスに対抗できなくなり、免疫機能の働きが抑制されて免疫力が低下することに繋がります。 また、筋肉量を低下させる要因にもなります。 コルチゾールの合成にはビタミンCが必要で、ストレスが蓄積するとビタミンCの消費が激しくなるため、いちごやキウイ、ブロッコリー、パプリカ、サツマイモ、ジャガイモなどのビタミンCを多く含む食品を積極的に取ると、免疫機能が強化され抵抗力が高まります。 ③女性ホルモン 女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があります。 エストロゲンは、免疫細胞がウイルスを攻撃するのを活性化する働きがあり、免疫力を上げて女性の体を外敵から守ろうとします。プロゲステロンは免疫システムを抑制する働きがあります。 男性に比べて女性の方が免疫システムは良く働き、免疫力が強い傾向があります。 しかし、排卵期前はエストロゲンが増加して免疫力が高まりますが、月経前後はプロゲステロンが増加し免疫力が低下しやすくなります。 女性は免疫システムが良く働く反面、月経周期によるホルモンバランスが崩れやすいこともあり、免疫力の変動も大きいのが実際です。 女性アスリートで問題となるのは減量や体脂肪の低下です。 過剰な減量やトレーニング、精神的・身体的ストレスは、希発月経(月経の頻度が少ない)や無月経(90日以上月経がない)の原因となり、免疫力の低下だけでなく骨粗鬆症になります。 4.免疫機能を高めて感染を予防するには ①食生活 免疫細胞を活性化させるためにはたんぱく質が必要です。 免疫グロブリンはタンパク質でできているため、肉、魚、卵、乳製品、大豆・大豆製品、発酵食品、乳酸菌などをバランスよく摂取しましょう。 特に、ビタミンA、ビタミンDはIgAが高まる栄養素とされています。 コレステロールも細胞やホルモン、胆汁酸(脂肪の消化吸収)の材料となっているため、脂質を嫌がらずに適度に取り入れるようにしてくださいね。 ②基礎体温 免疫力が正常に機能する体温は36.5°とされています。 免疫力を高めるには、基礎体温を上げることで血流が良くなり代謝が促進され、免疫細胞が活性化されます。 病気になった時に発熱するのは、身体が体温を上昇させることで免疫力を活性化させ病気と闘う力を上げようとする反応です。 発熱した際は、無理に薬で熱を下げずに、自然に治癒するのを待つ方が良いとされています。(高熱で生命の危険がある場合は除く) 体温が36℃を切っている低体温の人は、適度な運動と筋力アップで体温を上げることが大切です。 ③ウイルスの侵入 感染を防止する方法として根拠があるものは、ワクチン接種(重症化を防ぐ)、手洗い(ウイルスを洗い流す)、マスク(飛沫感染防止)が推奨されます。 風邪のウイルスは20分で粘膜に侵入するといわれています。 ウイルスが手に付着した状態で、鼻や口、眼をこすると感染してしまうので、こまめな手洗いが基本となります。 終わりに 適度な運動は免疫力を高め、健康な体づくりに役立ちますが、個人の体質によってその効果は異なります。 風邪をひきやすい人は、無理のない範囲で運動を行い、免疫力を高め健康な毎日を送りましょう。 また、年末年始は外出も多くなり、寝不足や運動不足、食生活も乱れがちになり、免疫力が低下します。 感染防止に努め、生活リズムを崩さずに過ごし、思い出に残るひと時をお過ごしくださいね。 ♡モノローグ♡ 今年最後のコラムとなります。拙いコラムをお読みいただき、誠にありがとうございました。 この1年、様々なテーマでお届けさせて頂きましたが、皆様にとって役立つ情報や日々の生活を少し楽しく過ごすことができるヒントとなったでしょうか。 来年も、皆様の生活と心を少しでも豊かにできるような情報を発信してまいります。このコラムを通じて、皆様とつながっていけたら嬉しいです。 新しい年が、皆様にとって健康で幸せな1年になりますよう心よりお祈り申し上げます。 柔道整復師・鍼灸師 本校柔道整復学科 専任教員 川﨑有子]