鍼灸師は「鍼」と「灸」の他、様々な道具を使い施術を行います。また「鍼」と「灸」にも多くの種類がありまます。ここではその道具について詳しくご紹介します。
鍼灸師について
鍼灸師が使う道具について
鍼
鍼治療では、通常、直径0.12~0.18mm程度の極めて細いステンレス製の鍼を使う。管鍼法といって円形の金属あるいは合成樹脂製の筒を用いる方法か、筒を使わない方法があるが、どちらも殆ど痛みがない。子供向けの小児鍼は、鍼を皮膚に接触させたり押圧させたりして治療する。
・日本鍼(にほんしん)
特徴:日本の鍼灸臨床で広く使われており、細い鍼が多い。和鍼(わしん)ともいわれる。鍼を刺す時に鍼管を使用することが多い。鍼管は日本で開発され、江戸時代の杉山和一により広められた。現在の日本の鍼灸臨床で最も多く活用されており、細い鍼を無痛で切皮・刺入するのにたいへん適している。いまの美容鍼灸の発展は日本鍼の特徴を生かしたものとなっている。
・中国鍼(ちゅうごくしん)
特徴:鍼のみで刺入するため技術が必要だが、使いこなせるようになると格段に治療速度が上がり患者に負担なく素早く治療を完結させることができる。
・美容鍼(びようしん)
特徴:皮下の浅い層、深い層に様々な刺激を与え、リフトアップ、小顔、たるみ、肌のターンオーバーを正常化し肌質等を改善する施術法。顔面に用いる事を主目的とした細く短い鍼もある。
・灸頭鍼(きゅうとうしん)
特徴:鍼による機械的刺激と灸による熱刺激を同時に行う。治療対象となる疾患の多くは、慢性疾患や冷え性などである。
・小児鍼(しょうにしん)
特徴:生後2週間から施術ができ、刺さない鍼で羽毛のような刺激を与える。鍼の形も猫や鳥の物があったりと工夫されている。基本的には小児に鍼が見えないように持ち施術を行う。小児疳の虫(夜泣き)や夜尿症、消化器症状などが適応となる。
・梅花鍼(ばいかしん)
特徴:太めの鍼先を数本たばねたような形の鍼で、皮膚刺激を行い血流改善する効果が期待できる。顔のむくみ、肌のくすみ改善、麻痺解消、育毛促進などに使用する。
・鍉鍼(ていしん)
特徴:ツボ、皮膚や筋肉に対し押したり、当てて、体に刺入しない鍼。素材も多数あり、金、銀、銅、チタン、ステンレス、プラチナ等を状態により使い分ける。
・散鍼(さんしん)
特徴:ツボにこだわらず、圧痛や緊張部にそれぞれの深さにしたがって刺入と抜鍼を素早く繰り返す。特に皮膚表面に対して、皮膚上に鍼が触れるだけ(体内へは刺し入れない)で行うことが多い。この方法は頭の先から足の先までどこでも施術でき、受けている方はマッサージのようで非常に気持がよい。また、深く刺すことはないので、鍼の恐怖心は格段になくなる。初めて鍼をうける方にオススメ。
・円皮鍼(えんぴしん)
特徴:長さ0.3~1.5mm太さ0.1~0.2mm程度の微小な鍼を皮膚に粘着テープで固定する方法。長時間、持続的な刺激をツボに与えることができ、美容に用いたり、高齢者転倒予防やスポーツ選手にも用いることも多く汎用性が高い。
・耳鍼(みみばり)
特徴:耳は「全身の縮図」であり、耳への刺激は全身の臓器や部位に影響を及ぼすとの考えのもと作られた、耳の反射区を利用する方法。20世紀半ばにフランス人医師によって開発、同時期に中国式療法も発明された。
灸
灸に使うもぐさは、ヨモギの葉を乾燥させて葉の裏側の部分だけを集めたもの。灸の方法には、もぐさを直接皮膚の上に乗せて着火させる直接灸と、皮膚との間をあけて行う間接灸などがある。灸は鍼灸師の指示に従えば、自宅でも行うことができる。
・透熱灸(とうねつきゅう)
特徴:良質のモグサを米粒大(米つぶの大きさ)程度の円錐形に作り、直接皮膚上の治療部位に置いて燃焼させる。熱刺激量を加減するために、半米粒大や細い糸状の大きさのモグサを使う場合もある。
・箱灸(はこきゅう)
特徴:皮膚の上に置いた箱の中で、皮膚から数センチ離れるように置いたモグサを燃やす方法。熱を伝える範囲がとても大きく患部や冷えを感じている所を温める。お灸の熱が持続的にツボを通じて経絡に伝わることで身体の内側からポカポカと温まる。
・棒灸(ぼうきゅう)
特徴:モグサを棒状にまとめ、紙でくるんだもの、直径1〜2センチのものが多い。火をつけた棒灸を皮膚から数センチ〜十数センチ離して輻射熱によりあたためるため穏やかな温熱刺激になる。温度の調整が自由にできるため、効果の出るツボのポイントに長時間心地よく施術できる。
・隔物灸(かくぶつきゅう)
特徴:皮膚上の施灸部位に生姜、ニンニク、塩、味噌などの介在物を置き、その上に小指頭~母指頭大のモグサを置いて燃焼させる。温熱刺激とともに介在物の成分による作用を期待する方法である。
その他
・低周波鍼通電療法(パルス)
特徴:専用機器で発生させた微弱な電流を鍼に通す。開発者によって「低周波置鍼療法」「パルス療法」「鍼麻酔方式治療」などとよばれている。痛みを主訴とした疾患のペインコントロール(疼痛管理)の治療法として応用される。刺激する組織によって①筋パルス②神経パルス③椎間関節パルス④皮下パルス⑤反応点パルスの5つの方式がある。
・吸玉、カッピング
特徴:古来より幅広く行われてきた伝統療法で中国でも鍼治療のあとに吸玉を行う病院があるほど身近な療法。吸角ともいう。背中など広い面にカップを乗せて吸引する方法で、血行改善・血行促進、身体内の湿気、寒気を体外に排出する効果が得られるとされている。
・かっさ
特徴:力を入れずに比較的広い面積を一度に刺激でき、皮膚表層の気血の流れが良くなることで顔や足のむくみの解消、リフトアップなどにつながる。また、新陳代謝が促進されるので冷え性、痛みの改善、風邪の予防といった効果も期待できる。
【監修者】
本校鍼灸学科 専任教員 稲垣元
鍼灸師
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